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第三章 統 治 の 沿 革 第一節 改 隷 前 庄の全域に亘りて清朝領有前既に蕃人の棲住するものありしも、其の文化極めて低く、殆ど原始的生活を營み、從つて何等の記錄なきが故に、當時の狀態を確知すること能はず。 康熙元年（寬文二年）彼の鄭成功蘭人を追ひて臺灣に據るや、先づ一府（安平の承天府）二縣(北路一帶を天興縣、南路一帶を萬年縣と稱す)を置き、親しく蕃人を撫育して殖產興業に盡せり。降りて康熙二十二年（天和三年、皇紀二三四二年）朝清に征臺の議起り、畢に大軍を舉げ、其の年六月澎湖島を占領せり。即ち、鄭克塽(鄭成功の孫)眾寡敵することを能はざるを悟り、眾を率いて同年七月降伏す。是より本島は清國の版圖に歸して福建省に隸屬し、福建巡撫に兼轄せしめ、臺廈兵備道を以て行政の任に當らせたり。翌二十三年（貞享元年）臺南に臺灣府を設け、臺灣、諸羅、鳳山の三縣を分置す。本地方は即ち諸羅縣の管轄に屬してり（諸羅縣は乾隆五十三年を以て嘉義縣に改む）。 同二十四年福建省泉洲陳瑜なる者當地方開墾の允許を得、隘丁を設けて蕃人を防禦し、漸次開拓の實を舉げたり。 雍正元年（亨保八年）淡水廳、澎湖廳及び彰化縣を設けしが、本地方は淡水廳（元竹塹に廳舍を置く、竹塹は今の新竹なり）の管轄に編入せられたり。 更に乾隆三十一年理蕃同治を置き、光緒元年（明治八年）には全島を臺灣、臺北の二府とし、卑南廳、橫春縣、淡水縣を新設し、元淡水廳を新竹縣、噶瑪蘭廳を宜蘭縣と改め、春冬二期福建巡撫分駐す。當時本地方は淡水縣に屬し、臺北府に管轄せられたり。 尚此の間行政區劃を街、庄、社に分ち、總理、地保、三快を置き、専ら自治制に依りて低度の行政を布きたり。而して、總理は主として民事を取扱ひ、地保は戸口を掌握し、三快は刑事を司りしが、此の外屯丁或は官隘を設け、専ら生蕃の防禦に當らしむ。 第二節 理 蕃 臺灣の未だ開けざりし時、既に土着の先住民あり、之を稱して蕃人と云ふ。本庄域開闢當時は龜崙社の占據地なりしも、後漢人の来往益々多く、競ひて開墾に従事し、自由に蕃地を侵略せり。之より蕃人との紛争常に絶えず、康熙末年（亨保初年）に至りて隘丁の制を設け、険要の地に之を散駐せしめ、以て蕃人の侵掠を防ぎぬ。雍正十二年（亨保十九年、皇紀二三九四）南崁社に社学を設けて極力蕃人に教育を施し、乾隆十六年（寶暦元年）武朗なる者を舉げて龜山社の頭目となせり。然れども、漢人は蕃人の無智に乘じて依然蕃地に侵入することを憚らざりしかば、為に蕃人の憤懣を買ひ、漢蕃人間の衝突日に甚しきを加へたり。於茲、乾隆十七年閩淅總督郝赤麟の奏に依り、土地を査定して新に土牛溝を築き、漢蕃両地域の境界たらしめ、傍に碑を建てて嚴に蕃地侵入を禁じたり（土牛溝とは、平地に溝を掘り、溝畔に牛の形に似たる土丘を築ける一種の防備措置にして、本庄域内尖山西側より八塊庄との間に尚其の遺跡あり）。然れども、當時政府の實權普く及ばざりしかば、依然侵占の弊を絶つこと能ばず、乾隆三十一年（明和三年）更に理蕃同治を置き専てら理蕃事業に當らしめたり。 其の後蕃人漸く政令に服し、漢人に同化せられたる者亦少からず、之を熟蕃と稱し、政府も極力保護を加へ、一定の土地を給與し、又社制を設けて之を統轄したるも（現在の新竹州桃園龜山庄蕃社）、一方政令に服せざる者は大嵙嵌溪を越えて多く山地に移住したり。此等の蕃人は平埔蕃・噶瑪蘭族の一にして、往時は桃澗平野に棲息せしものなり。 乾隆五十五年（寬政二年）に屯蕃の制を布き、蕃界に官隘を設け、以て蕃害を扞禦せり。當時本庄域内二甲九莊に官隘の設置あり、俗に之を尾寮と稱す。 第三節 改 隷 後 の 行 政 機 関 明治二十八年四月十七日下の關條約に基きて臺灣の我版圖に歸するや、同年六月十七日總督府始政式を舉行し、初めて民政を布き、地方假官制を制定して全島を臺北、臺灣、臺南の三縣に分ち、其の下に支廳を置きたり。本庄域内は臺北縣の直轄に屬し、事務取扱者を分置して地方の行政事務を補佐せしめたるも、明治三十年六月二十四日台灣總督府府令第三十號に依りて市街庄社に長を任置したり。同年八月三角湧辨務署を設置し、同九月二十四日一定の區域を制定して街庄社を區に改め、區長を任用せり。同三十二年十月街庄の廢舍を行ひ、更に翌三十三年三角湧辨務署を廃止して大嵙嵌辨務署を設置せり。 同三十四年十一月地方官制を改正し、全島を分ちて二十廳となせり。本庄域は即ち陶仔園廳に屬す。更に同三十六年一月一日及び同三十八年七月一日を以て區域の廢舍を行ひ、同四十三年一月十八日區長役場の名稱を用ひたり。 大正九年七月二十七日地方制度改正に依りて本庄域は臺北州に屬し、鶯歌と稱へ、海山郡役所の管轄となれり。今庄治の沿革を表示せば大要左の如し。 （イ）明治三十年九月二十四日（臺北縣三角湧辨務署時代）
（ロ）明治三十二年十月
（ハ）明治三十四年十一月一日（桃仔園廳時代）
（ニ）明治三十六年一月一日
（ボ）明治三十八年七月一日
（ヘ）明治四十三年一月十八日
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