第十四章 金融機關
第一節 概説
本庄域内に於ける唯一の金融機關として樹林信用組合及び鶯歌信用組合あり、一年の貯金額二十四萬六千二百三十六圓、同貸付金二十三萬八千百三圓を示し、他に利用購買販賣事業をも兼營し共に成績佳良を告ぐ。
第二節 産業組合概況
（一）樹林信用利用購買販賣組合
本組合は大正六年の創立に係り、當時の組合長は樹林區長黃純青氏にぃて、鶯歌庄の内十一字及び土城庄の內一大字（廳時代の樹林區一圓）を區域とし、現在（昭和七年度末）組合員數一千、出資口數一千九百四十八、出資拂込總額三萬五千九百六十七圓、準備金二萬五千八百五十五圓、諸積立金二萬九百八十八圓、剩餘金五千百九圓に達し、貯金十四萬四千四百八十二圓、貸付金十二萬八千六百九十圓を有す。其の業績頗る佳良なり。
本組合は金融事業のみならず、更に進みて産業開發に意を用ひ、副業並に農産品加工の獎勵目作農養成、農事並に畜産改良、住宅改善等の事に攜はり、又農業倉庫、共同購買、共同販賣の諸事業を兼營し、農村の振興開發の目的を以て組合長黃純青氏及び専務黃塗氏等は創設以来終始一貫懸命の努力を重ね、為に全島稀に見るの發達を遂げたり。其の累年成績を掲ぐれば左表の如し。
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附記
一、大正九年の出資口數の激增は大戦好況の機に乗じて特に增口せしに因る
二、昭和二年の出資口數及び組合員數の減少は一戸主主義に改めんが為め家族組合員を全部脱退せしめたるに因る
組合長及び専務は創立以来異動なく、組合長黃純青氏、専務黃塗氏なり。
（二）鶯歌信用購買販賣利用組合
大正六年四月桃園廳三角湧支廳長達協良太郎氏が同風會集會の席上に於て、地方經濟の發達を計るには其の資金融通の途を開くこと即ち産業組合法に基きて信用組合を組織するを最も適切となる旨力説せられたるに依り、當時の區長傅德令氏自ら東奔西走し、地方有力者と相謀りて組合設立の必要を遊説し、多數の賛同を得て同年五月十六日尖山公學校に於て創立總會を開き同七月二十六日其の筋の許可を得て設立せられたるものなり。當時の組合員百九十二名、出資口數五百二十八口、其の名稱を鶯歌石信用組合となし、鶯歌石區の一圓（廳時代）を區域と定め、鶯歌石區役場事務所を借りて開業したり。
設立當時の役員は傅德令、陳斐然、李德信、陳清波、陳綿春、監事陳發、陳煥採、林田安、邱傳琳、余海 の諸氏にして、大正六年八月十七日臨時總會に於て傅德令氏組合長に選舉せられたり。
組合長傅德令氏は大正九年十月一日制度改正と同時に其の職を辭し、理事陳斐然氏後任に選舉せられ、事務所を鶯歌に移し、地名改正に伴ひて鶯歌信用組合と改稱せり。
本組合設立以来各役員は勿論、組合員亦等しく組合事業を理解し、利用大いに務めたれば、成績逐次向上し、出資金壹萬圓に達せざるに拘らず、常に十萬餘圓の産業資金を地方に融通し以て地方經濟を浸潤し、而も剩餘金は出資金に對して常に四割を下ることなき好成績を舉げ得たり。
組合の兼營事業として共同購買、共同販賣、共同利用の三種あり。共同購買は日用品、肥料其の他を共同に低廉にて購入し、之を組合員に配付し、以て中間榨取に因る損失を免れしめ、共同販賣は組合員の生産品を共同にて高價に賣拂ひ、以て中間商人の介在を防ぐを目的とし、主要品目は地方特産の瓦、煉瓦、陶器、茶、米榖等なり。共同利用事業としては産業倉庫を設置し、組合員生産品の寄倉又は加工を行ひて生産品の品質向上 に生産費の低下を圖り、他方信用貸付と連絡し、寄倉品を擔保として貸付をなし、以て農村金融の圓滑を期し、物價の調節に資しつつあり。大正六年以来の事業成績表を描ぐれば左の如し。
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歷代組合長は傅德令（大正六年より大正九年まで）。陳斐然（大正九年より昭和二年まで）。陳清波（昭和二年より昭和五年まで）。陳義方（昭和五年より昭和六年まで）。林田安（昭和六年より昭和八年まで）。陳阿玉（昭和八年より現在まで）。専務理事は陳發（大正九年より大正十三年まで）。陳綿春（大正十三年より昭和二年まで）。陳斐然（昭和二年より昭和五年まで）。陳炳郁（昭和五年より昭和六年まで）。遊色嚴（昭和八年より現在まで）の諸氏なり。
（三）柑園信用販賣購買利用組合
一、設立 昭和八年十二月二十七日
二、設立の動機及經過
世界的不況の影響を受けて農村疲弊の慘狀は愈々深刻化せるに依り、政府はその對策として専ら自力更生を高唱するに至れり。而して自力更生の根本は産業組合の擴充にあるに拘らず、從來此の柑園地方には其の設立なく、隣接の三峽、鶯歌、樹林の三組合に加入せるもの約半數に及べり。然るに、交通不便の為に組合加入に因る真の福利を受け得られざるのみならず、事毎に多大の損失と苦痛とを甘受せざるべからざる狀態にありしを以て、漸く組合設立要望の聲の高きを聞くに至れり。
斯くして昭和七年に左記十八名の設立委員を選舉し、數回に涉る協議を遂げたる後、其の筋の認可を申請し、同時に庄に於ては詳細なる生産調査を行ひ、郡に於ては三組合との協定を為す等、各方面の助成と當局の指導とを受けて、恰も意義深き 皇太子殿下御降誕の御年昭和八年の十二月二十七日附を以て認可の運びとなれり。
○設立者氏名
林此。王明杉。陳德鑒。陳士溪。王扁。林茂献。
陳阿塏。許阿 。周安平（以上理事）
林富根。蘇慈。王阿川。林媽喜。王紅毛。林壬貴。
陳裕。陳金興。王長安（以上監事）