第十三章 社寺宗教
第一節 概説
本島在來の宗教としては儒教、佛教、齋教、道教及び雜教の五種にして、之に領臺後内地傳來の神教、外國傳來の基督教を加へて略七種に區別せらるるも、神教及び基督教は傳來日尚淺く、一部の有識者間にのみ信奉せられ、本島人大眾は尚舊來の信仰を奉じ、上は佛菩薩及び古聖賢より下は木石偶像に至るまで、雜然として玉石同架の觀を呈す。即ち各教固有の教義信條を喪失し、相混淆して其の識別殆ど不可能の狀態なり。
元來本島人は元支那より移住したるものにして移住前既に支那本土に於ける邪教迷信に惑溺し、且つ移住當時より内に種族の鬪爭あり、外に生蕃との紛競あり、疫 又其の身を冒すも醫藥を求むること能はず、自然に生死を神佛に託し、仙怪草木を祁りて漸く慰安を求むる狀態なりき。從つて宗教に對しては、其の教義を理解する知識も研究する誠意もなく、從つて祀廟或は神佛會の濫立を見、一面僧道、長髮僧、巫覡術士の族出する所となれり。之本島に於ける宗教の雜然として其の區別困難なると共に多分の道教的色彩を帶ばしめたる原因なりとす。
（一）儒教
儒教は孔子が堯、舜、禹、湯、文、武、周公の思想言行を祖述憲章せるものにして、道徳の實踐躬行を説き、治國の要道を示すと同時に、祭祀を以て政務の一部となし、頗る之を重んじたり。本教の創始は唐虞三代の古に溯り、上は官設の祀廟ありて或は天子自ら祀り、或は官吏に祀らしめ、下は民設祀廟ありて萬民之を祀れりと雖も、學者讀書人等が降筆の術を演じ、或は擲筶、演戲の如きを行ふに及びて次第に道教的色彩を帶ぶるに至れり。
本庄下に於ける濟安宮、（元海山莊大帝廟）は即ち之に屬す。
（二）道教
道教は皇帝、老子、莊子の教義に附會假託して創設せられたるものにして、老莊は單に教祖として奉ぜられたるに過ぎず。その説く所は乃ち神仙、妖怪、鬼神に及び、虛心養性に依りて昇天化仙し得べしと信じ、後漢の末更に張陵（張天師）なる者老子の秘籙と稱し、符水禁呪の法を創始して漸く一教を形成せり。而も本教は個有の祭神の外に儒教所屬の神靈、佛教の祭神をも併せ奉じたるを以て、儒教、佛教をして次第に道教的色彩を帶び、本來の教義を失はしむるに至りたり。道教の祀廟は僧侶廟守となるを例とし、道士は祀廟に住せず、人の需に應じて治病、除災等の祈禱をなし、或は葬儀を行ふを生業とす。
本庄域内には道教に屬する寺廟なしと雖も、五顯公、田都元帥、相公、王爺等の塑像あり、道士、巫覡によりて治病、驅邪を行ふ等、迷信の未だ去らざるは甚だ遺憾とする所なり。
（三）佛教
本島の佛教は福建鼓山湧泉寺又は廣東怡山長慶寺の末徒の開拓せし所に係り、皆禪宗に屬するものなるも、浄土の教義を雜へ、觀音、阿彌陀佛等を併祀し、觀音經、禪門日誦諸經、阿彌陀經等を念誦す。
本庄下に佛教信者 しとせざるも、佛教と道教の混淆したるものにして、両者の識別甚だ困難なり。
（四）齋教
齋教は佛教の一種なり。禪宗より變胎し、其の教義も佛寺の奉ずる所と異るなしと雖も、儒道両教の教義を加味したるもの多し。其の徒の僧侶と異なる處は出家せず、法衣を纏はず、頭髮を剃らず、一般の俗人として生業を營み、而も佛弟子として其の身を持すること嚴正に、能く戒律を守り、常に菜食して肉食をせざるを本義とす。故に之を持齋宗（吃齋）又は俗に食菜人と云ふ。僧道を用ひず、齋友間の葬儀は齋友間にて讀經其の他儀式を行ふ。齋教は之を先天（妻帶を禁じ、絕對菜食を守り、讀經の際は默誦するもの）龍華（妻帶し、一定の日時に限りて菜食し、讀經は音讀）金幢（龍華に同じ）の三種に分ち、何れも觀音を信奉す。
本庄下に齋堂二あり、何れも先天派なるも、外に自家に於て金幢派、龍華派の吃齋者として其の教義奉ずるものあり。
（五）宗教的團體
本島の舊慣に依る宗教的團體に神明會、祖公會、父母會、孝子會等あり。
（イ）神明會
神明會は讀書人、同業人、同鄉人、同姓者等身分の相同じき者が同一の神佛を祭祀する目的を以て組織し、輪番に主祭者（俗に爐主）を定めて祭典を舉ぐ。此の時會員相集りて宴會を開き祭祀の他に會員相互の利益增進或は親睦の途を計り、同業者間の規約又は共同財産の維持保存等を協議決定するを通例とす。會員は必ず若干の金額を捐出するが故に、會には常に多少の財産あり、例祭舉行の際は其の財産より生じたる利子を以て費用となし、剩餘ありたる時は其の會の規約又は慣例に依りて處分す。其の處分方法には（一）後日の為に積立つ（二）學校其の他の公共事業に寄附す（三）會と特別關係ある寺廟の經費を補助す（四）會員に分配す（五）爐主の所得とす、等種々の別あり。
（ロ）祖公會
祖公會は略神明會と相似たるものなるも、其の異る點は會員の資格は必ず同姓若は同宗の者なるを要し、又祭神は必ず會員の祖先たるに在り。其の規模大なるものは祖廟を設け、會員父祖の位牌を格納するあり。
（ハ）父母會
父母會又は孝子會とは會員の父母、祖父母等の死亡したる際、相互に喪葬の費用を補助する目的を以て組織せられたる團體なり。一般細民間に廣く行はれ、講會なるものに類似し、會員相互間に於ては義兄（年齡高きもの）義第（年齡低きもの）の稱呼を用ゐ、殆ど實兄弟の如く相親睦し、發會に際し、血盟式を舉げて飜意背信なきことを神前に誓約するを通例とす。血盟式は雞を屠して其の血を採り、酒に混じて柸を舉ぐ。會員間は義に堅く、情に敦し。
（二）祭祀公業
其の他祭祀公業と稱するものあり。父祖の財産を鬮分（相續分配）するに當り、其の財産の一部を公業即ち獨立の財産となし、祭祀の資となすを普通とす。即ち宗教的團體にはあらざるも派下と稱し、同一祖先を祭祀する子孫の一團體を形成するものなり。此の外、子孫が各所屬財産中より土地又は金錢を 出して父祖の祭祀の為に公業を設立し、或は親族又は他人の祭祀を繼續せしむる為に寄附して公業とし、或は老ひて繼嗣なき者其の財産を他人に讓興し、以て自己及び祖先の祭祀公業とするもの等、其の種類 しとせず。
第二節 社寺廟宇
（一）濟安宮
五十三年（天明八年）張必榮氏の建設せるものにして、其の舊址は現在樹林驛の北側を距る二十町の地點潭底山麓に在り、大正十四年樹林驛の東方五町のところに遷し、建築費四萬參千四百六拾五圓を要したり。
○濟安宮東遷記
濟安宮祀保生大帝傳聞帝吳名本福建省泉州府同安縣白礁人宋太平興國己卯年三月十五日降世平生修身養性採藥煉丹以醫道救人有功於世景祐丙申年五月初二日飛昇紹興辛未年詔建廟白礁勒封大道真人邇來屢加封贈明洪熙元年加封萬壽無極保生大帝當明末清初我祖國漳泉先民或隨鄭成功起意獲抱圖南壯志佩帝香火冒險渡臺奉明正朔墾荒海外聚族于斯均沾靈庇清乾隆五十三年建廟潭底山麓歷百四十年香火甚盛今為應交通變遷計參拜者便利扶乩人地東遷于斯里人献金四萬貳千圓新其廟宇招何二年十月二十四日慶成建碑記之
○甲第保生大帝紀錄
帝諱本、字華基、號雲衷、泉之同安人也、系出自延陵季子、吳亡後、子孫竄於九州、一支分寓臨漳、九世修齋、聖父諱通、暨聖母黃氏、避亂居銀同海濱之白礁、結茅屋而居、宋太平興國己卯、聖父年四十八、聖母年三十八、夢見長素真人、南陵使者、北斗星君、道紫薇帝星入懷、於三月十五日辰時降生、異香滿室、毫光燦爛、少穎異、及長、不茹葷、不娶婚、乙未中秋月、海濱有異人泛槎、邀與偕遊、到瑤池見西王母、授以醫書、及斬妖除魔之法返而燈槎、片刻歸家、於是修真養性、采藥煉丹、以醫道救世、宅左湧泉、病者一飲輒俞、黃醫官、程真人、鄞仙姑、昭應靈王、會人等從學焉、江仙官往東京赴試、途中遇虎、其僕登瀛、被虎傷害仙官心切赴試而去、帝雲遊天下、到河南山林間采藥、見枯骨鋪地、心為惻然、檢之失左腿、因取路旁向東柳木為骨、咒水點化而起、喊虎尋主、帝憐之、收為童子、從至京、適仙官登第、途過而怪之、帝啟以故、仙官未信、白於大吏、吏亦疑其荒唐、乃令僕仆地咒水、而皮肉溶化、驗之果係柳木代骨、求復活不得心切歸依學道、帝曰、後會有期、分袂而別、大吏奏知真宗、召見授與御吏、帝辭歸隱後仙官為同安縣令、蒞任詢書吏、遂棄官從學、主簿張聖者聞之、解後同往、學醫濟世、所過州郡、皆焚香拜迎、仁寄明道元年、漳泉荒饑、帝翌旗約十日內、挽米舟以濟、果如言運到各 、領給咸均、二年又患癘疫、帝於四月初七日步置布斗、驅番擊死魔王、及千百鬼眾、民賴以蘇、玉帝聞其陰 浩大、詔召昇天、景祐三年、丙子五月初二日、帝偕妹吳明媽、妹夫王舍人、闔家自白礁飛昇、靖康二年高宗泥馬渡江、見帝在雲頭禦寇、於紹興二十一年詔建廟白礁、孝宗嗣位、乾道七年、梁鄭公詳達部使者、以廟額請乃勒為慈濟靈宮、謚曰大道真人慶元初寇至、却退之、大臣啟奏寧宗、勒封忠顯侯嘉定時復封英惠侯理宗寶慶三年、封康祐侯、嘉祐二年封正祐侯、四年封沖應真人、五年封妙道真君、明太祖鄱陽湖、見帝助戰、洪武五年、勒封昊天御吏醫靈真君、永樂七年孝慈皇后乳患、詔求醫、帝化為道士應詔往太子引見坤靈宮、後以遊方道士辭之帝奏曰、用線胗脈、便知病症、後密令將線掛環、帝診之曰、木上鐵器、在將線纏貓、帝曰、形似野獸非熊非虎、莫非貓乎後然之、線按乎、帝曰、肝脈大長而血疑、乃乳患也、當以炙之、後取屏蔽體、帝立於屏外引線炙之立痊、成祖賜官不受、賜金却之、有白鶴遶殿、帝乘之而去、臨行曰、臣即高皇帝時助戰鄱陽湖者及太子即位、洪熙元年、御賜龍袍一襲、勒建宮殿春秋祭祀、如封萬壽無極保生大帝、事見福建通誌、及閩書郡邑誌自分香泉城佳壇、花轎、各處有廟、而官香盛典、則惟城西文錦舖廟號甲第者、靈應尤著、前道憲王公太守沈公、特書甲第官香四字加以官即、道帝往白礁謁祖進香、自後數年一舉、沿途求醫治疾、丐符鎮宅者塞道也、今歲春仲、神擇四月二十日起程、時連邑大旱、制臺大人偕列憲在泉祁雨、至期啟駕、而甘雨大至、越日到同邑、官民歡忭拜迎、馬巷通守樊公、普奉匾日、霖雨均霑同安大尹張公學溥奉匾日甘雨隨車、皆造廟拈香、以答神貺於虖、自宋閱民數百年、帝之為靈昭昭也、而居勝地、揚神光、至今尚感動當道、則其煥文錦之輝、成甲第之盛為郡中諸廟冠又何疑哉、因參考舊聞而紀廟右
乾隆五十六年辛亥桂月榖旦
里中孝廉陳雲程敬書勒石
（二）庄下宗教要覧
（イ）寺廟の部
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（ロ）齋堂の部
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