第七章 交通電氣 第一節 道路、鐵道、軌道、自動車 一、道路 主要道路は州指定道路にして、現在十路線ありて四通發達すと雖も何れも現制度施行以前に完成せるものなれば、今日の交通機關の發達を豫想せられず、從て幅員も充分ならず。現在臺北道、枋橋道、三峽道、新莊道、大溪道を除くの外は自動車交通に適せず。然れ共昭和八年度に於て本郡の大動脈を形成する臺北より板橋、土城を經て三峽に達する州指定道路を一〇米に擴張する豫定なり。尚ほ本郡は河川多き關係上橋樑之に伴はず不便を見つつあり。殊に臺北市に隣接しつゝも其の中間にはる新店溪に橋樑なく、常に隔靴搔痒の感ありしも昭和六七年度繼續事業として州費二〇〇、〇〇〇圓を以て之が架橋工事に着手し近く完成の見込みなり。之が竣工の曉は板橋、三峽道路の擴張と相俟つて、郡下交通の一新紀元を劃すべし。又鶯歌庄の幹線を為す樹林、鶯歌道の開鑿竝に改修も州費一〇〇、〇〇圓を以て工事中にして、之亦近く完成を見るべし。現在州指定道路は大方幅員三間以內にして總延長一四里八二間に達す。 二、鐵道 鐵道は官設にして新店溪畔なる板橋街港子嘴より鶯歌庄大湖を經て桃園郡に至る縱貫線延長凡一五哩三にして、板橋驛附近より臺北間を除くの外は複線工事完成し、郡內に抱擁する驛は江子翠、板橋、浮洲、樹林、山子腳、鶯歌の六驛にして、內江子翠、浮洲の二驛は單にガソリンガーの停留場に過ぎず。而して六年度中の乘降人員は一、五六一、六四一人貨物の發着噸數は二六四、〇〇九噸に達し、最近機動車の運轉により沿線部民の福利頓に揄チせり。 三、軌道 私設軌道は自動車交通の發達以前に於て敷設せられたるものにして四通八達し、海山輕鐵會社、臺灣製糖會社、蔡福商會等經營し延長亦二五哩八に達す。右の中三峽、鶯歌間の路線最も頻繁なり、此の外專用線六四哩あり。 四、自動車 自動車の發達は最近の事實にして、其運轉路線も道路為改修の結果三線路に過ぎざるも、其の發達の狀況は到底他の交通機關の追隨を許さず。現在之れが經營者は板橋街に海山自動車株式會社あり、樹林には新莊自動車商會、鶯歌には桃園軌道株式會社自動車部の三會社にして線路延長一五哩四に及ぶ。將來新店溪架橋、各道路の改修行はるゝ曉に於ては、產業交通等に及ぼす影響甚大なるべし。 第二節 水上交通 水上交通は大嵙崁溪及新店溪に依るものにして、概ね支那型船を以て物貨の輸送を為すに過ぎす。其寄港地は大嵙崁溪に於て三峽、鶯歌、頂埔方面なれども河川の流床一定せず辛ふじて交通するに止まるも、新店溪方面は比較的水深く大嵙崁溪に比し船舶輻湊し、重なる寄港地は板橋街江子翠、同港子嘴、中和庄水尾とす。尚本郡に船籍を有するもの支那型傳五〇石未滿二九六隻にして、年々減少の傾向にあり。 第三節 電氣、電話 郡下の電氣事業は總べて臺灣電力株式會社經營にして、電燈及動力の供給を主とし、燈數六、六六九、燭光數は一四五、一八六、動力は電動機七一臺、馬力數五九一、五にして無線放送、精米、酒釀造を主とし、其他種々の事業に用ひらる。 電話は板橋、三峽兩局に交換臺を設置せられてより漸次普及し、現在に於て板橋局三六、三峽局一六の加入あり。此の外板橋には臺北郵便局の電話三回線存す。 |