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教育 第三章 教育、宗教

第一節 初等教育

一、 小學校

郡下に於ける小學校は板橋、三峽の二校にして何れも尋常科の複式編成なり、全郡下の內地人兒童の大部分を收容す。而して兒童數は兩校を合して男女一五〇名內外にして、學級數は四學級(三峽小學校は兒童數一〇名內外にして單級たり)なれども年々揄チの傾向にあり。尚此中男女一五名の本島人共學兒童あり。又兩校の昭和七年度經常經費總額は二、六〇一圓にして、平均一人當年經費一九圓餘なり。而して職員男四名女二名計六名にして、訓導五名教員心得一名なり。

二、 公學校

公學校は郡下を通じて一三校三分教場なり。內高等科を併置せるもの三校あり。昭和七年四月末現在にして、學級數は本科一三五學級兒童數八、〇七三名一學級平均五九名なり。又高等科は五學級兒童數一八一名一學級三六名なり。而して就學步合は男五四・三六女二五・九〇平均四〇・八七を示せり。尚就學兒童は別に勸誘せずと雖も年々激揩フ傾向あり。昭和七年度中の教室の搨z六に及ぶ。又昭和七年度に於ける經常經費の總額は三二、九五四圓なり。各學校共出席步合頗る良好にして、最高昭和七年度平均九八・九三%最低九七・五六%なり。次に職員配置は一四八名にして其內譯は訓導一二六名准訓導二名教員心得二〇名なり、內男子一二四名女子二四名にして、本島人職員は八九名なり。

(昭和七年四月末日現在)

街庄別本島人學齡兒童及就學步合表(昭和七年三月三十一日現在)

第二節 幼稚園及書房義塾

一、 幼稚園

幼稚園は一箇所にして板橋街にあり。財團法人大觀書社の經營にて其設立代表者は林熊光なり。保育期間四年にして組數二、在園兒童男二三名女二二名計四五名何れも本島人の子弟とす。保姆一名保姆心得一名の本島人あり。經費は昭和七年度九七一圓兒童數漸次揄チの傾向にあり。

二、書房義塾

書房義塾は三峽庄插角及五寮に各一箇所を設置し修學年限四箇年なり。在學兒童は昭和七年四月末現在一三五名にして、內男一〇六名女二九名教師は大有義塾二名、五寮義塾一名とす。昭和八年度より大埔公學校分教場に變更決定せらる。

第三節 社會教化

一、青年教習所

青年教習所は昭和四年四月臺北州訓令第八號に依り設立、同年直に開所公學校卒業生にして上級學校に進まざる者の為に健全なる公民教育を施すを以て目的とす。職員は所在地に於ける公學校長を主事、其他は適當なる教員を指導員に依矚せり。次に教習所數は五箇所にして、即ち板橋、漳和、樹林、三峽、土城各公學校內に置かれ、昭和七年度經費總額一、二四一圓在所教習生一四三名なり。設立者何れも所在地の街庄長とす。

二、國語講習所及簡易國語講習所

不就學の本島人子弟に國語を習得せしむるを目的とし、授業日數は年を通じて國語講習所は一〇〇日以上、簡易國語講習所は六〇日以上にして講習期は主として農閑期の晝間又ほ夜間なり。而して之が經費總額一、九二一圓を要したり。尚簡易國語講習所は昭和七年中に從來の國語練習會中相當成績の上りつゝあるものを昇格せしめたるものなり。

(昭和七年一二月末日調)

第三節 氣象

三、教化聯合會

教化聯合會は昭和六年十二月二十八日臺北州令第二六號に依り從來の同風會を廢止し新に設置せるものにして、各街庄に夫々街又は庄の教化聯合會あり、之を加盟團體とする郡教化聯合會あり。

街庄教化聯合會は當該街庄、學校、男女、青年團、派出所、保甲等各種の教化關係機關を以て組織し國民精神の作興、經濟生活の改善の目標の下に各教化委員を置き教化に努む。設立日尚淺しと雖も漸次健實なる發達をなす。殊に各街庄教化聯合會共、其の所屬街庄區域內の派出所每に生活改善實行會を組織し、舊弊打破、生活改善に努力しつゝあり。昭和七年度各街庄教化聯合會の經費總計三、二二〇圓郡教化聯合會は一、五二〇圓なり。

四、青年團及女子青年團

昭和六年十二月二十八日臺北州令第二十七號に依り元同風會所屬の青年會を青年團に、處女會を女子青年團に組織を改めらる。主として學校職員之が指導に當り修養に勉めつゝあり。昭和八年三月末日現在の團數、團員數は青年團十四團體、團員四一三名女子青年團、十三團體、團員二七二名なり。尚此等團體を加盟團體として、郡聯合青年團及郡聯合女子青年團あり、何れも郡守を聯合團長に推舉せり。

五、圖書館

圖書館は各街庄にありて全部公立なり。藏書冊數四、九九七冊に及び年經費二、一四九圓に達す。昭和七年度中に於ける閱覽人員二五、六八〇人に及ぶ。而して板橋、三峽兩圖書館設立最も古く相當充實す。

(昭和六年度)

第四節 社寺宗教

一、概說

在住內地人少きと臺北市の近傍なるが為神社の設置なく內地式佛寺と認むるものもなく、單に中和庄中坑に尼寺一、板橋街に天理教布教所一あるのみ。前者は多數の尼僧居り新設日尚淺けれども信徒多く、後者は內臺人の信仰者あれど一定せず。又本島人間には在來の儒教、佛教、齋教、道教の四教あれど本來の義を喪失し其名のみを存しつつあり。寺廟は比較的結構莊麗なるもの多し、又基督教は本島人を對象としたるもの各所にあるも概して振はず。

二、各宗教

1.基督教

基督教は長老教會にして板橋、三峽、樹林の三箇所に會堂あり。何れも本島人の布教師を置き專ら本島人の教化に當り信徒總計二三二名あり。

2.天理教

板橋に布教所一ありて布教師の派遣あり、信徒內地五〇名本島人名あり。

3.佛教

中和庄中坑に曹洞宗に屬する尼寺一あり圓通禪寺と稱す。尼僧一八名信徒七三六名にして何れも本島人なり。遠近より參詣者常に絕えず、今や廣大なる本堂を造營中なり。

4.舊慣に依る宗教

舊慣に依るものは概說に述べたる如く四教なれども、媽祖、觀音佛祖を主神とせるもの其他三峽に祖師公、中和に開漳聖王を祀れる寺廟を主たるものとす。然れども寺廟は何れも各教所屬の神佛を併祀し其間截然たる區別を為し難し。又各地に土地公廟ありて福コ祖神を祀る。すべて教理に徹底するより寧ろ戒律を重んずる傾向あり、一般住民の信仰頗る深く從つて祭祀甚だ盛大なり。寺廟三九、齋堂三、計四二に達す。

5.舊慣に依る宗教的團體

完教的團體に神明會、祖公會あり。神明會は同鄉人同姓等のもの相集り或る神佛を祀るを目的とし、此外會員相互の親睦利益を計り或は共同財產の維持を為し、其收入に依りて年一、二回の祭祀を行ふ。
祖公會は略々神明會に相似し、其異る點は會員の資格を同姓又は同宗者を限り、且祭神は必ず會員一同の祖先たるにあり。尚神明會は一四九祖公會は九に及ぶ。

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