第四章 庄治
第一節 改隷前ノ舊街庄治機関
（一）概説
清光緒元年（我明治八年）臺北ニ始メテ淡水縣ヲ設ケラレ間モナク我カ三角湧街ニ総理、董事及保長ヲ置カレタリ総理董事ハ民事ヲ取扱ヒ保長ハ刑事ヲ取扱ヘリ前両者ハ民選ニテ縣ノ認可ヲ経タルモノニシテ後者ハ縣ヨリ派遣シタルモノナリ此即チ當時ニ於ケル最下級ノ行政機関ニシテ此ノ外ニ尚屯丁ノ設置アリテ専ラ生蕃ノ防禦ヲナサシメタリ
（二）総理
総理ハ當時ノ自治機関ニシテ我カ三峽庄下ニテハ其ノ事務所ハ三角湧街ニ設ケラレ総理館ト稱セリ而シテ其ノ職務ハ主トシテ民事調停ニ與リ或ハ縣ノ命令ヲ受ケテ訴訟事件ヲ探査シ其ノ曲消ヲ證言シタリ而シテ総理ニハ正副アリテ其ノ正総理ニ任ヒラレタルハ張捷登ナリキ
（三）董事（俗ニ頭人ト云フ）
董事ノ職務ハ総理ト大差ナシ主ニ住民ノ紛争事件ヲ仲裁調停ス言ハハ総理ノ分権ナリ領臺直前ニ董事ニ任セラレタル者ノ中ニ李廷璧、陳種玉、劉家珍、廖圳等アリ
（四）保長
保長（地保トモ云フ）ハ官治機関ニシテ今日ノ駐在警察官吏ニ似タルモノナリ而シテ保長ノ下ニハ原差数名アリテ犯罪者檢舉緝ノ任ニ當ル又保長館（保長事務所）内ニ監房（留置場）ノ設アリテ暫時罪人ヲ留置スル場所トナス改隷直前保長ノ職ニアリシ者ニ陳元、林富來、黃和尚ト云フ者アリ
（五）屯丁
屯丁ハ専ラ生蕃防禦ノ任ニ當リ恰モ今日ノ隘勇警手ノ如キモノナリ
第二節 改隷後舊街庄治機関
領臺直後ヨリ大正九年九月末日ニ至ル迄本庄内ニ於ケル行政機関ノ概要及其ノ変遷狀態ヲ舉クレハ次ノ如キ
明治二十八年九月三角湧街ニ警察署ヲ置カルルニ當リ臺北保良局三角湧保良分局ヲモ設置セラル時ノ分局正主事ハ陳嘉猷ナリ明治三十三年八月三角湧辨務署ヲ設置セラルルト同時ニ補助機関トシテ今ノ三峽庄内ヲ六區ニ分チ各村長ヲ置ケリ
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明治三十四年十一月官制改正ニ依リ桃仔園廳管轄ニ入リ從來ノ六區ヲ廃止シテ三角湧ニ桃仔園廳第十九區成福ニ同第十八區ヲ設置セリ
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明治三十八年七月第十八區ヲ成福區、第十九區ヲ三角湧區ト改稱セリ三角湧支廳管轄區域内ニハ三角湧區、成福區、鶯歌石區、樹林區ノ四區アリ
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大正九年十月一日地方制度改正實施ニ依リ元三角湧區及成福區ヲ廢セラレ同時ニ臺北州海山郡三峽庄ナル地方團體區域トナレリ
第三節 三峽庄治機関
（一）庄役場ノ沿革
大正九年七月地方制度大改正アリテ州制、市制、街庄制公布サレ同年十月一日始メテ地方團体制度ノ實施ヲ見ルニ至レリ即チ臺北、新竹、臺中、臺南、高雄ノ五州ト臺東、花蓮港ノ二廳ト三市及四十七郡百五十五街庄ヲ置カレタリ從來桃園廳三角湧支廳下ノ三角湧區及成福區管域ヲ臺北州海山郡三峽庄ト改稱セラレ同日ヲ以テ本庄ニ制ノ實施ヲ見三峽庄公館後字公館後一一七番地ノ三及同所一二〇番地ニ在リシ舊三角湧區役場ヲ庄役場ニ充用シ同時ニ初代庄長ニ舊三角湧區長陳佛齋氏ヲ任命シ亦助役以下書記等夫々ノ任命アリテ始メテ地方團体制度ナル街庄制ニ依ル庄政ヲ施シタル而シテ舊庄ハ総テ之ヲ大字ト稱シ三峽、八張、中埔、礁溪、麥子園、劉厝埔、隆恩埔、公館後、鳶山、茅埔、福德坑、蔴園、大埔、山員潭子、十三添、橫溪、挖子、成福ノ十八大字トナシ面積三・一七五方里アリテ之ヲ二十區ニ分チ各區ニハ區総代（昭和四年五月三十一日ヨリ之ヲ區委員ニ改ム）ヲ置キ庄政補助ノ任ニ當ラシメタリ大正十一年一月十三日白雞、竹崙、大寮ノ三大字此面積二・九五七九方里ノ編入アリ昭和七年二月一日亦五寮、挿角、東眼ノ三大字此面積五・六一九四方里ノ編入アリコレニテ本庄総面積ハ一一・七五二三方里トナレリ
溯ッテ昭和三年從來役場廳舍ハ狹隘ニシテ事務處理上不便尠カラサルニ付キ金一萬二千五百二十九圓ノ建築費ヲ投シ昭和御大典記念事業トシテノ建坪七六・四二坪ノ二階建煉瓦造ノ堂々タル庄役場廳舍ヲ新築シ同四年二月七日之レカ竣功ヲ見 月二十三日本庄主催物産品評會褒賞授與式ヲ兼ネタル落成式ヲ舉行シタリ尚ホ現任陳庄長ハ制度改正當初ヨリ任命セラレ從來引續キ重任シテ今日ニ及ヘリ而シテ庄長以下吏員一同一致協力シテ庄治ノ進展ニ努力シツツアリ昭和七年六月十七日第三十七回臺湾始政記念日ノ佳辰ニ當リ協同輯睦克ク公共事ニ竭シ施設経營見ルヘキモノアルルミナラス役場事務ノ改善整理亦概シテ良好ナル故ヲ以テ臺北州知事ヨリ光榮アル長彰ヲ受ケタリ
（二）庄職員 昭和九年二月十五日現在
（三）庄協議會員
第一回定員十二名任期自大正九年十月一日至大正十一年九月三十日
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第二回定員十二名任期自大正十一年十月一日至同十三年九月三十日
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第三回定員十五名任期自大正十三年十月一日至同十五年九月三十日
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第四回定員十五名任期自大正十五年十月一日至昭和三年九月三十日
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第五回定員十五名任期自昭和三年十月一日至同五年九月三十日
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第六回定員十五名任期自昭和五年十月一日至同七年九月三十日
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第七回定員十七名任期自昭和七年十月一日至昭和九年九月三十日
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（四）區委員
備考 昭和四年五月二十日府令第四一号ヲ以テ街庄制中区総代ニ関スル ヲ区委員ニ改正セラレタル結果同日迄ハ区総代ト稱シタリシカ以后区委員ト稱セリ
第四節 區管轄區域ノ變遷
第一次 自大正十年四月一日至同十一年三月三十一日
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第二次 自大正十一年四月一日至昭和二年三月三十一日
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第三次 自昭和二年四月一日至同七年三月三十一日
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第四次 自昭和七年三月三十一日至同八年三月三十一日
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第五次 自昭和八年四月一日至現在
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第五節 最近ニ於ケル庄重要施設
（一）公會堂建設
三峽公會堂ハ大正十五年三月十九日建築落成ニ係ルモノニシテ建坪百五坪九合六勺ニシテ工事費一萬四百圓ヲ授シタリ元來當地方ニハ公私各種ノ集合場所ノ設備無キカ為メ地方民ハ夙ニ不便ヲ感シ因テ地方有志相計リ公會堂建築ノ決議ヲシテ制度改正以來寄附金ヲ募リテ建築シタルモノニシテ昭和二年三月七日本公會堂建設委員ヨリ庄ヘ寄附シ昭和三年此ノ使用條例ヲ制定シ以來該條例ニ依リテ公私ノタメノ會合ニ利用サレサツアリ
（二）公園設置
三峽公園ハ昭和二年度ニ設置シタルモノナリ斯ク社會ノ進化ニ伴ヒ個々ノ生活ヨリ漸次共同等トナリ文化ノ發達殊ニ物資的文明ノ發達ハ生活狀態ヲシテ益々複雜ナラシメ神経ヲ刺戟スルコト甚シクナレハ公衆ニ慰安休息ノ途ヲ開キ併セテ保健衛生ノ向上ニ資センカ為メニ設ケタルモノニシテ場所（公館後字公館後一五〇番ノ三外二筆）ハ元來庄有地ノ山林地ニシテ區域内ニハ松樹櫻木茂盛シ台湾躑躅叢生セリ園中岡上ヨリ台北平野及桃園高原一帯ヲ展望シ得ル地點ニ在リテ公園トシテ自然ノ美ヲ成シ公園内ニハ櫻井特務曹長以下三十九士ノ表忠碑及殉難警察官ノ記念碑等アリテ四時遊覽者相當多ク市街住民ノ納涼散策盛ニ利用サレツツアリ
（三）報時機設置
昭和四年二月二十三日庄役場廳舍新築落成及庄主催物産品評會開催ヲ機トシ分室構内ニ「モーターサイレン」ヲ新設シテ毎日午前六時（夏期午前五時）及正午二回ノ正シキ時刻ヲ庄民一般ニ報知スルナリ
（四）庄是制定
本庄ニテハ夙ニ庄政ノ方針ヲ確立シ一庄總体ノ進ムヘキ目標ヲ定ムル必要アルヲ感シ偶昭和五年十月一日ノ街庄制實施十周年ナルヲ機トシ之ヨリ庄是制定ニ関スル調査研究ヲナシ其ノ後案ヲ為シテ審査ノ上ニ審査ヲ加ヘ昭和六年十二月二十一日開催委員會ニ於テ再三審査ヲ遂ケテ後決定シタルモノニシテ今之カ實踐躬行ニ努メツツナリ